以前は区役所で乳幼児健診の心理相談員をしていました

2021年02月08日 | みんなの声, 個人

以前は区役所で乳幼児健診の心理相談員をしており、1歳児~中学生ぐらいまでの発達障がい児や不登校、ひきこもりの問題、虐待家庭など、地域の子どもたちとお母さんたちに関わっていました。

ASDやADHDなどの子どもたちのグループや0~1歳児の母親教室など、保健師さんとプログラム作りにいつも頭を悩ませていたのですが、この時<マインドフルペアレンティング>の知識があれば、母子にとって本当に効果的な支援ができただろうな…と本当に悔やまれます。

走り回ってばかりで座らないわが子を殴りつける母親、抵抗するわが子を小さな部屋に閉じ込めて鍵をかけてしまう母親、子どもといることが苦痛でどこかに出かけて戻ってこない母親……本当に多くの母子を見てきました。

母親がうつ病などの精神疾患を持っている場合やパーソナリティに問題がある場合などは、育児の状況はさらに深刻でした。

自主的に家から出られない母親は、子どもも家から出さないことが多く、子どもたちは机の下に隠れて息をひそめているということもよくありました。背負っているランドセルに、母親が投げた包丁が刺さっている子もいました。心と体が傷ついた子どもと、自分をコントロールできない母親を本当にたくさん見てきました。

そのような多くの母子を見て、まずは母親を認め、しっかりとケアすることが大切だと体験的に学習していたものの、具体的に何をすればよいのかは判然としないことも多く、悩むことが多くありました。

母親の精神疾患に対する支援や貧困に対する支援など、生活環境の福祉的な調整を優先していましたが、それよりも最も重要なことは「癒し」の支援だったのだと今日改めて気づきました。

また、恥の感情は日本人独特と学んだ気がします。そうではないことが新しい視点でした。

今回教えていただいた<マインドフルペアレンティング>を、区役所や産院などの<妊婦教室>から取り入れてもらえたらいいと思います。学ぶ機会を得ることができない、地域で苦しみを抱えている母親たちにこそ、お腹の中に赤ちゃんがいる時から積極的にこちらから情報提供していくべきだろうと強く思います。出産後の保健師さんや助産師さんが赤ちゃん訪問する時もチャンスでしょうし、乳幼児健診で心理士が少し実践してみるのもよいかもしれません。行政と連携した<マインドフルペアレンティングのすすめ>は、児童虐待を減らす方略の一つではないかと期待しています。

今回は心理職として役立つ知識を得ようと思って参加させて頂きましたが、瞑想やワーク等を実施しているうちに、自分自身の親子関係や夫婦関係について色々と感じる所がありました(実はその事について少し恐れを抱いており、「今後の仕事に役立てよう」と殊更に防衛的な構えになっていました)。結果、開催中に思わず涙が溢れてしまった事もありました。今まで研修会に参加して、ここまで自分の核となる思いや出来事と向き合う事がなかったため、現在少しの戸惑いと「今、この場で、その事に気づかせてくれた」戸部先生との出会いに対する深い感謝の気持ちを抱いています。せっかくの貴重な機会を頂きましたので、しばらくこの不思議な出会いや、それに伴う感情を味わってみようと思います。

また、スクールカウンセラーとして勤務するうちに、保護者の支援(問題を抱えている方への個別面談だけでなく、より予防的でレジリエントに日常を過ごせるような活動)にも一層注力したいと考えるに至りました。先生が最後に仰った「地域に根差した参加型研究」を聞いて、思わず「これだ!」と膝を打った次第です。講師の戸部先生とまた研究等の機会でもご一緒できるよう、一歩一歩行動を進めていきたいと思います。改めて、この貴重なご縁に感謝を申し上げます。

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